たかが途中式、されど途中式…途中式が書けるとコスパが良い!
梅雨入りが発表されて雨の日が多くなりましたが、それでも晴れた日は夏のようなので熱中症には十分注意しましょう!
さて、今日は数学(算数)のお話です。
私は数学や算数を教えていますが、
「途中式って書くのめんどくさい」
「途中式を書けって言われるけど、答えが分かれば(合ってれば)書かなくてもよくない?」
こんな声を聞くことがあります。
それに対する答えは…「途中式は書く必要がある!」です。
というより、「数学に限らずどの科目でも、途中式や説明を書けるくらいの論理的能力が必要とされる」のです。
「論理的」とは簡単に言うと…「きちんと筋道立てて考えるさま」です。
論理的能力とは「○○だから△△と言える」のように、そのように考えた根拠を含めて説明できる能力ということになります。
ということで、タイトルにある「途中式が書けるとコスパが良い」を説明していきますね。
なぜ途中式を書いた方が良いのか?
・入試で途中式(思考過程)を記述させる問題が出題されるから
→2020年度(今年の2月)の千葉県公立高校入試問題を見てみると…
国語は書き抜き問題を除くと約3割、理科や社会も約2割の問題が自分の言葉で説明させる問題でした。
英語は数年前から記述問題が増え、毎年出題されてきた条件英作文の単語数が今年から増えました。
数学は後述しますが、図形の証明問題以外にも途中式と説明を記述させる問題の出題が続いています。
・この傾向は今後さらに強くなると予想されるから
→記述問題が増えているのは千葉県公立高校入試だけでありません。
答えだけ書く試験はこの先どんどん減っていきます。
高校の定期試験・大学入試・大学の授業などの試験では記述の量がハンパないです。
2020年の教育改革により、これまでは学んだことを理解できているか(知識・技能)を重視していた教育が、知識や技能を習得するだけでなく、それをもとに自分で考え、表現し、判断することが求められるようになりました。
つまり、答えを知っているのは「当然」として、それを自分で考え、説明できるかを問われているのです。
新傾向!数学でこんな記述問題が出題されています
数学の図形の証明問題以外で、記述問題を含めた新傾向の問題が2019年度より千葉県公立高校入試で出題されています。
【2019年度千葉県公立高校入試問題より】(問題を一部抜粋)
図1のように、底面の半径と高さがともにr㎝の円錐の形をした容器Aがあり、底面が水平になるように置かれている。
ただし円周率はπ(パイ)を用いることとし、容器の厚さは考えないものとする。
図2は、容器Aでr=5㎝のときに、水をいっぱいに入れたものである。また、図3は底面と半径の高さがともに5㎝の円柱の形をした容器に、半径5㎝の半球の形をしたおもりを入れたものであり、これを容器Bとよぶことにする。
容器Aに入っているすべての水を、容器Bに静かに移していく。
↓解答はこちらです↓
中学1年生で学習する空間図形の問題です。容器Aの体積と容器Bの体積を計算して、容器Aの体積のほうが大きければ水はあふれ、体積が等しいか小さければ水はあふれません。
数式だけでなく日本語も含めて全てが解答
さきほどの模範解答を見て、どんな感想をお持ちになりましたか?
「図形の証明問題より短いし、立体の体積の求め方が分かる人なら書けるのでは?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ところが・・・
上の問題の完全正解率は約19%で、部分点がもらえた人は約6%でしたが、答えを何も書かなかった「無答」の人が約30%でした。
4人中の3人はこの問題で0点だったということになります。
ちなみに翌年2020年度の同様の記述問題の完全正解率は約10%で、部分点がもらえた人は約15%、「無答」の人が約50%でした。
2019年のものより完全正解率が下がり無答率が上がっているので、記述問題が難化していることがわかります。
問題を読んで、「答えは求められるけど解答の書き方が分からない」「何となくわかるけど説明できない」と思う人は多いかもしれません。
模範解答のようにきちんと書き切ることは、普段から記述することに慣れていないとなかなか難しいのではないでしょうか?
2019年のものより完全正解率が下がり無答率が上がっているので、記述問題が難化していることがわかります。
問題を読んで、「答えは求められるけど解答の書き方が分からない」「何となくわかるけど説明できない」と思う人は多いかもしれません。
模範解答のようにきちんと書き切ることは、普段から記述することに慣れていないとなかなか難しいのではないでしょうか?
例に挙げたような「論理力を問う問題(思考過程を書かせる問題)」は入試などで増えています。
ということは中学校の先生たちもこの傾向を意識して、どの学年でも定期テストなどで
数学…他にも図形の証明問題
国語…読解問題はまさに論理力を問う問題、公立高校入試では資料を読んで200字の作文にまとめる問題
英語…読解問題は様々な形式の文章から内容をとらえる問題、条件英作文で場面に合う英文を考えさせる問題
理科…実験でやらなければいけない操作とその理由を問う記述問題
社会…資料から読み取れることやその根拠を問う問題
のような記述問題を出題する可能性は高いと思います。
ということで、数学の途中式を書くことは…
論理力をつけるのに一番近道で、ほかの教科にも役立ち、入試で求められる力がつき、人に自分の考え方を説明する練習が出来るのでコスパが良いのです!
途中式をどのように書いたら良いのか分からない人は、まずは教科書や問題集の例題のまねをして書いてみましょう。
途中式はもちろん計算を間違えないためにも書きますが、途中式で大切なところは「人に考え方を伝える」ことです。
人に自分の考え方を相手に伝えられるかどうかは、社会に出てから必要とされる力でもあります。
まずは、「どんなふうに途中式を書いたら、自分がその場にいなかったとしても、相手に分かってもらえるかな?」と考えてみましょう!
最後にまとめです!
・入試やテストで途中式を記述させる問題(思考過程を問う問題)が出題される
・そのような問題が増えている傾向があるので、途中式を書く能力は必要
・数学の途中式は相手に自分の思考過程を表現するもので、これが書けるようになると他の教科に役立つ論理力も身につくから、コスパが良い
2020年06月21日 17:30